Ukajun books

書店勤務(2社)8年。3児のパパ。本屋さんのこと、本のことを中心にブログを書いています。

008【セクシャリティをだす、ひきだす】

 休憩時に食するのがうどん。まぁこのあたりからして、まぁなんとういか残念な感じがあるのですが、食べることに時間やお金をかけないのが、ありのままのワタシなので、それはともかく。ななめ向かい側に背をむけて着席した20代後半くらいの女性がいらっしゃって。うどんをすするのに、その長い髪を丁寧にかいあげかいあげ、すする。そのたびにうなじがひかる。まさか、うどんやさん(某チェーン店)にそういった類のセクシャリティを感じる時間なんて期待していないぶん、その風景がすごく印象的で。

もちろん、こういったことをつきつめると最近はたたかれるご時世ではあるのですが、働く姿も、結果としてそれがすごくセクシャリティがあるという場面があると思います。もちろん、単純に色気ムンムン(男性女性問わず)ということでなくて。ひとつの仕事を真摯に取り組む姿はどうしたって、情感あふれるものなはずだし。もちろんそればかりではないでからね。

本屋さんにそういったセクシャリティがよみがえることってあるのかなぁ。ただの肉体労働として、作業として、仕事しているとなかなかきつい。とりもどすべきは、ヒトのちから、気持ちがはいった、という。

 

吉井和哉の(秘)おセンチ日記】

007【こどもと本】

本屋さんという小売業のなかで、すべてが衰退に向かているというと、もちろんそうでなくて。たとえば、児童書の売り上げって、実は伸びしろがある、下げ止めできるジャンルとして語られることが多いです。

実際、ボクは2社のチェーン店で働いてますが、似たような傾向でして。紙の本である意味があり、プレゼントするにはすごくお手頃な価格設定、教育としても早い段階で活字慣れさせられる…などなどまぁ商売っけが多分に残されたジャンルなわけですよ。

さらに加えると書店の担当ってジャンルで分けられるんですけど、大きな書店だと児童書フロアみたくあって、当然、専任の担当者がいて。そこで活躍されている方々のモチベーションと他ジャンルと比較すると高い、傾向にある。ように思います。すでに、子育てがひと段落した主婦の方や、子どもが大好きで児童書も大好きっていうスタッフの集合体の熱量が売り場にそのまま反映されている。ことが多い。これはめちゃくちゃ大事なことで、はじめに書いた贈答品としてお手頃なんてこと以上に。結局、本を買いにいらっしゃったお客さま、こども視点で売り場がつくられているからこそ、本を買う(プレゼント)という太い確かな導線が自然とできあがって、結果につながっている。

実際、ボクも子どもたちを本屋さんによくいっしょに行くのですが、本は良いですよ。子育てと本については、またこれからも書きますが、本がモノとして家にある環境ってやっぱりいいですよね。

 

 

【じゃあじゃあびりびり】まついのりこ/偕成社

初めて子どもが生まれて、初めていただいたのが『じゃあじゃあびりびり』

当時勤めていた書店の児童書担当の方からいただきました。

子どもが生まれて初めて親になると、いろいろなことを考えます。

たくさんあるなかで、本っていつから読ませてあげればいいのかなぁっていうのもあると思いますが、もうこれは、読んであげたいってなれば、その日からですよね。

もちろん、赤ちゃん自身が両手で本をもって、自分で見開きするには、半年以上先になるかと思いますが、読んであげるのはいつからでもですよね。

そして、生まれて間もない赤ちゃんとコミュニケーションからたくさんを親として学んでいくことになります。

なるほど、色が明確に発色させている本は確かに赤ちゃんは興味をしめしてくれるものなんだなぁ、この厚手のボードブックは若干重いしいかがなもんだろうと感じていただ、故意に投げてみたり、破ろうとしてみたり、モノとして扱いはじめ、外出するときも必需品となりうる絵本はそこそこ丈夫でなければすぐにダメになるんだなぁとか。

 

蔽娘は本書の「びりびりびり」にすごく良い反応をしてくれたし、「ひこうき ぶーん ぶーん ぶーん ぶーん」は、やはり大空を飛ぶイメージでダイナミックに本をはばたかせるとさらに喜んでくれました。

もし、はじめの1冊を悩まれていたら、こちらの1冊はお勧めですし、プレゼントすると被ってしまう可能性があるので、即お渡しするのもおすすめいたします。

 

006【消費期限】

ともすると自分を若者のまま、そのポジションであらゆるものを見ているとき、はっとする。これはなかなかの驚きですよ。勿論、何を始めるにも遅いってことはないし、年齢に関わりなくチャレンジすることはめちゃ大切。でもね、時として超俯瞰して物事と自分を見るとき必要。これはヒトに限らず、会社だってそうだ。

かつて若者のシンボルとして機能していたブランドも気がつくと年老いていて、ポジショニングを把握できてないことが多いと思います。

そんなとき、全てをキレイさっぱり忘れて新しい道をきりひらけるかっていうのがすごくすごく重要なことなんですよね。

本屋さんだってそうだせ、あったりめぇだ。アマゾンアマゾン、がーふぁ、がーふぁいうけれどもさ、巨大なモンスターだって世に出てもう十分時が経っている訳で。

もう常識なんてないよ、とすごく乱暴な考えも。平成が終わるこの年にいっちょやったるでっていうムードを皆んなでつくって、変われないものたちを置き去りに、明るいミライをみようと思うのだ。

 

【さよなら未来】若林恵岩波書店

005【再び出会うことには意味がある】

 昨日、このブログを書いていたお店(珈琲屋さん)を退店したとき、運命の再会をはたした。と、いいたのですが、再会というより、一方行であって、お見かけした。かつてボクがアルバイトをしていた飲食店の常連の方で。自分も年齢を重ねていますから、当然、その方もお年をとられていたのですが、以前より健康そうにみえ、(あくまで10メートル先の距離感ですが)、すごく幸せを感じました。

 いっしょに働いている書店員さんで小説を書いているヒトいました。たぶんなのですが、今もきっと書かれていると思います。何度か、著作をみせていただくことがあったのですが、内容はさておき、書き続ける才能は確かにありました。これは本当に大切なことですよね。

 で、実はボクも数か月間だけなんですが、書店が開講している通信制の文章講座を受講していた時期があります。どうして、このことを思い出したのかというと、さきほど再会した方、なんですよね。

 その文章講座は当時現役でライター、編集のお仕事をされている方に出題されたテーマについて書いた1000字程度の文章を添削をしていただけるというものでした。赤が入ってメールで返信されてきます。そして、半年だったか一年だったか忘れましたが、受講生を対象にしたコンペがございまして、応募は自由なんですが、文字数は10,000字で文芸部門、随筆部門でエントリーするといったものでした。

 それはちょうど2011年3月末締切だったんです。だから、東京に住むボクは当然あの揺れ経験していて、3.11の真っ只中にいたんです。(決して過去として語ってはいけない)

 自ずと書いたテーマは死ぬことと生きることになります。いまこのブログを書こうとする前にその原稿にあたってみたんです。これは、機会をみてこのブログで公開させていただきたいですが、なかなかいい文章を書いていて、我ながら感心しました。で、その導入部にボクはその方を登場させているんですよ。いかも漱石のこころに倣ったスタイルで“先生”的なポジジョンで。

 いや、ブログにしろ何にろ文章って残しておくと良いですよ。本当に。8年前のボクがもっていて今のボクが失いつつある、あるいは失ったものをはっきりと認知できます。

 書店で勤務しながら小説を書くことはあまりおすすめしません。すでに書いたような気がしますが、本を売ることと読むこと、書くことはすべて全く別のことですから、混乱させちゃったらいけないじゃん。なんとなく。程度ですけど。

 

 

【こころ】夏目漱石/新潮文庫

004【走りながら考えるの巻】

本屋さんの仕事で「選書をする」というのがまぁあります。書店で働きたいと積極的に考えているヒトは、あぁやりたいやりたいって思う仕事かもしれません。

選ぶ点数にもよりますし、選書内容にもよるところは大きいですが、当然書店スタッフにも、いやいやイヤよ派といやいややりますニヤニヤ派が存在しますよね。前者は意外に思われるかもしれませんが、キャリアを積んでるベテラン派に多い傾向に。あると思います。選書なんて偉そうなことできないわよ、そもそも個人のフィルターをとうして本を意図的に展開するのは主義に反しますものときたもんです。後者は新人さんから中堅あたりによく見受けらまして、本が好き文芸書が好き、好きです付き合ってくだあい、違ったおつきあいくださいっていう。で、想像以上にオーソドックスな本を選ぶんですけど(わるくいってないですよ)

でボクは、仕事だから、「やります」と即お返事しちゃいます。1冊でも100冊超えでも、イージーに即レスです。

年間でいうと結構異常だと思いますが約1000冊ぐらい選書しているんですけど。おススメの一冊は?といわれるても、格差社会にテーマに5冊選んでと依頼されてもたいして困りません。冊数なんて問題ではないです。

 

【イシューからはじめよ】安宅和人英治出版

 

003【古書店】

響きでいうとそれは何と言うか愛らしい。

“コショテン”

少し疲れてたというかだいぶ擦り切れていたボクは神保町に

ビックスクーターで向かった。

とにかく、本屋で働けるところを探そう、収入が無くなるというのは、

まぁ当然、それはそれはそこそこプレッシャーがあって、精神的にまいっていたけれど、動くしかないわけで、一生のうち、一度は本屋さんで働いてみたいなぁを、じゃそれは今だ、先のことはひとまず、自分の好きに従うことにした。

バイト募集の張り紙がされてあったのは、小さな小さな古本屋さんだった。

神保町は詳しくないけれど、あまり、何と言うか威厳みたいなのがない古本屋さんだった。当時、ボクは将来的には自分の小さな本屋さんを開業してみたいなぁという気持ちもあるにはあって、つまりそれは“いやいや、それファッションだから”という指摘が入れば、あぁ、そうかも知れないねと返す程度ではあったと思うのだけれど。

 

とにかく、ビックスクーターでいくつか書店を回って、並んでいる本よりも求人張り紙を求めて漂った。

もちろん、ネットは接続されていたから、足と電子で本屋さんで働く場を確保した。

そこはコショテンでも、古本屋でもなく、大きな本屋さんだった。

 

【これからの本屋読本】内沼晋太郎/NHK出版

 内沼晋太郎さんについて、知っているつもりでいた。名前は存じ上げていたし、ブルータスやテレビ番組だった思うがお顔も知っている。なんというか、おしゃれな感じでファッション的なアプローチで本と繋がっている方だという本当に身勝手極まりない先入観があり、それ以上に深く知らなかったし、積極的に内沼さんの著書に触れようとしなかったのは、たぶんブックコーディネーター等という肩書的な部分でボクが本当に良くないことなんですが、意識的に避けているところがあった。

が、猛省です。まさに“この本をみよ”です。形状からして、もうね、おかしいわけです。本を好きであれば、書店にこの館型造詣は常識的になし、ってなるのに、上部両角断裁されている六角形。

 そして、本書最終章である9章【こうして僕は本屋になった】である。ボクと同じように内沼さんって何者なの?というところから手にとった方は、この章から読むことをお勧めいたします。はっきりいって、すごいです。さらっとこれまでの筆者が本屋を開業されるまでのキャリアが時系列に述べられているですが、行動量がすごい。現在地と行動量は比例するというのはやはり真実で、様々な“肩書”をもつに至るのも当然。この章に触れてボクは自分に幻滅すると同時に自分が従事する業界にこのような面白い方がいるということに勇気をいただきました(どこまでも身勝手)はじまりが、受験生のころの学習参考書の選書に紐付くというのも、すごく良いですよね。

 また、誠光社の堀部篤史さん、内沼さん主催の本屋講座の卒業生で現在、本屋ルヌガンガ店主との鼎談記録も必読。これはもう堀部さんのストレートな表現が良い。ファッションとして小さな本屋さん開業ということに警戒されているのか堀部さんの正直な受け答えが良い。事業計画書以上に要されるのは商売として、個として一本立ちできるかが大きいと。あたりまえのことだけれども、そこそこの規模であれば努力次第でやっていけるとあくまでふわりと言い切るっているのだけれど、それは相当なことで、この自信を裏付ける経験は絶対的に必要。この鼎談にはいろんな角度から学べるアプローチがあるので、読み返し、読み返しその都度新しい視座を手にいれていくと大変勉強になる。

 その他の多くの章に関しては、まさに本屋読本であり、これかあら本屋をはじめよと考えている、あるいは、本屋で働きたい、出版について学びたいという方に向けて丁寧に書かれており、ボクとしては、働く場所を確保したならば、本書を教科書的に購入というのもオススメいたします。少なくても、本書をただ購入して、読むだけでおわらしてはいけない、と自戒をこめて。

 

 

 

002【暴力装置】

丸ノ内線に乗っているからといってドラマが起こる訳ではない。とここまで書いて、あの日のことを思い出す。そもそもボクは日比谷線ユーザーでもなければ、あの頃は大阪の実家で生活しておりまして、あの日の映像はつまりはテレビ越しにみた事件。事件はいつだって、そうだったのだ。直接触れられない場所で起こって、何かを奪われた、そんな気分にさせられるものだ。

本を売ることになる人生など、全く考えなかった。今だってそうだけれど。そもそも、それはたまたま書店員になったんだ。偶然。偶然なんだよ。アルバイトで入った大きな本屋さんの雑誌売場で大きな地震が起きて、翌日、売場社員に電話して、いつもの倍以上に時間をかけて、通勤した。そう言えばその本屋さんはアルバイトに交通費支給はなかった。不安は不安として東京で暮らすボクは、何かとんでもない時代に生きているのだと考えてた。

京王線笹塚には3つくらいパチンコ屋さんがあって、自粛ムードが漂うなか、無責任な足跡を甲州街道は何も残さない。

 

【ずばり東京】開口健/光文社文庫

 

 

 

001【はじまりがおわる】

はじめまして、今日からブログをどんどん書いていきます。

どうぞよろしくおねがいします。

現在ボクは、本を売ることをナリワイとしています。

本を売ることと、本について書くことは全く別モノだと考えています。

 

ついこの間、一緒に働いている就職活動中の学生スタッフに「どうしてこの仕事しているんですか?」と尋ねられてまぁわりと困ったんですよね。

理由はいくらでもあげられるんですけど、すべてにおいてパンチがないんですよ。

たいした収入が得られるわけではないナリワイを選択している自覚があるぶん、どうもそこを超えてく理由が弱い。つまり、まぁ嘘臭いし、それは聞き手も見透かすわけです。

これはよくない。自分のふた回りは違うワカモノに率直に伝えられないって、どうしようもなく惨めなことだと思います。

そのはなしの流れで、できれば仕事なんてしたくないという彼女に向けて、いやいやそれはないよね、ボクは仕事はしたいよ。仮にAIだのBIだの、そんな語られかたする未来いよいよやってきても、ボクは働くよと。お金なんてこだわらず、完璧に好きに熱中するよね的なことをいったんですよ。そしてそれはつまり社会に貢献することに繋がるんだみたく、すごくおおざっぱに。

 

そして、いま、ボクはブログを書いています。

つまり、これは結構、すごい強い気持ちが潜んでます。

たぶん。

いや、絶対、たぶん。

 

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド村上春樹/新潮社