Ukajun books

書店勤務(2社)8年。3児のパパ。本屋さんのこと、本のことを中心にブログを書いています。

003【古書店】

響きでいうとそれは何と言うか愛らしい。

“コショテン”

少し疲れてたというかだいぶ擦り切れていたボクは神保町に

ビックスクーターで向かった。

とにかく、本屋で働けるところを探そう、収入が無くなるというのは、

まぁ当然、それはそれはそこそこプレッシャーがあって、精神的にまいっていたけれど、動くしかないわけで、一生のうち、一度は本屋さんで働いてみたいなぁを、じゃそれは今だ、先のことはひとまず、自分の好きに従うことにした。

バイト募集の張り紙がされてあったのは、小さな小さな古本屋さんだった。

神保町は詳しくないけれど、あまり、何と言うか威厳みたいなのがない古本屋さんだった。当時、ボクは将来的には自分の小さな本屋さんを開業してみたいなぁという気持ちもあるにはあって、つまりそれは“いやいや、それファッションだから”という指摘が入れば、あぁ、そうかも知れないねと返す程度ではあったと思うのだけれど。

 

とにかく、ビックスクーターでいくつか書店を回って、並んでいる本よりも求人張り紙を求めて漂った。

もちろん、ネットは接続されていたから、足と電子で本屋さんで働く場を確保した。

そこはコショテンでも、古本屋でもなく、大きな本屋さんだった。

 

【これからの本屋読本】内沼晋太郎/NHK出版

 内沼晋太郎さんについて、知っているつもりでいた。名前は存じ上げていたし、ブルータスやテレビ番組だった思うがお顔も知っている。なんというか、おしゃれな感じでファッション的なアプローチで本と繋がっている方だという本当に身勝手極まりない先入観があり、それ以上に深く知らなかったし、積極的に内沼さんの著書に触れようとしなかったのは、たぶんブックコーディネーター等という肩書的な部分でボクが本当に良くないことなんですが、意識的に避けているところがあった。

が、猛省です。まさに“この本をみよ”です。形状からして、もうね、おかしいわけです。本を好きであれば、書店にこの館型造詣は常識的になし、ってなるのに、上部両角断裁されている六角形。

 そして、本書最終章である9章【こうして僕は本屋になった】である。ボクと同じように内沼さんって何者なの?というところから手にとった方は、この章から読むことをお勧めいたします。はっきりいって、すごいです。さらっとこれまでの筆者が本屋を開業されるまでのキャリアが時系列に述べられているですが、行動量がすごい。現在地と行動量は比例するというのはやはり真実で、様々な“肩書”をもつに至るのも当然。この章に触れてボクは自分に幻滅すると同時に自分が従事する業界にこのような面白い方がいるということに勇気をいただきました(どこまでも身勝手)はじまりが、受験生のころの学習参考書の選書に紐付くというのも、すごく良いですよね。

 また、誠光社の堀部篤史さん、内沼さん主催の本屋講座の卒業生で現在、本屋ルヌガンガ店主との鼎談記録も必読。これはもう堀部さんのストレートな表現が良い。ファッションとして小さな本屋さん開業ということに警戒されているのか堀部さんの正直な受け答えが良い。事業計画書以上に要されるのは商売として、個として一本立ちできるかが大きいと。あたりまえのことだけれども、そこそこの規模であれば努力次第でやっていけるとあくまでふわりと言い切るっているのだけれど、それは相当なことで、この自信を裏付ける経験は絶対的に必要。この鼎談にはいろんな角度から学べるアプローチがあるので、読み返し、読み返しその都度新しい視座を手にいれていくと大変勉強になる。

 その他の多くの章に関しては、まさに本屋読本であり、これかあら本屋をはじめよと考えている、あるいは、本屋で働きたい、出版について学びたいという方に向けて丁寧に書かれており、ボクとしては、働く場所を確保したならば、本書を教科書的に購入というのもオススメいたします。少なくても、本書をただ購入して、読むだけでおわらしてはいけない、と自戒をこめて。